編集(管理者用) | 差分 | 新規作成 | 一覧 | RSS | FrontPage | 検索 | 更新履歴

MakisimaDiary20051201 - *北斎展(東京国立博物館) (管理者により凍結中)

目次

北斎展(東京国立博物館) (管理者により凍結中)


北斎展 HOKUSAI

無事,主催の日本経済新聞社の販売店から招待券も3枚手に入り, 8:50 頃, 両親と谷中から歩いて上野の東京国立博物館に向けて出発.

9:30 開館で,9:15 頃到着,すでに門には列ができはじめていた. 招待券があるので,「すでに券をもっている人の列」に並んだ. 「券を買う」列だと,相当後ろになっていたろう. ちょっと時間があったので,公園内で用足し. 9:30 少し前に開門. 平成館にみんなで競争.

およそ,母の鑑賞のペースにくっついていく. なにしろ,マキシマ研究所のデザイナーであり, 目も肥えているので,私にとっては かなり高速. だが,それでも人越しに観るような状態. 照明も暗く,なかなか目が慣れない. およそ1〜2時間で見終わったろうか.

見た気がしないので,一般展示も見るからと言って,1人残る. 博物館の各館にはそれぞれ無料(要100円玉)のロッカーがあるようだ. コートと鞄を入れ,北斎展をもう少しじっくり見て回る.

しかし,すでに人が倍以上になっていて,目的の絵を見るのは至難. 見入っていると,「すすめー」「足下の線より外に」と係がうるさい.

まずは,富岳三十六景にとって返す. 亀の歩み寄り遅いのを我慢して,一番前の列を進む. 「津波」としても有名な今回目玉の「神奈川沖浪裏」は, 国立博物館蔵のものに入れ替えられていた. 看板だったメトロポリタン美術館のものとどんな違いがあったんだろうか.

赤富士「凱風快晴」 は3枚. 看板はギメ美術館のもの. ほかに,ケルン東洋美術館,東京国立博物館のもの. 初刷りのものは,原画(北斎)と版元が一緒に合わせていくので, 作者の意図に近いものができる. 人気が出ると何度も増刷され, だんだんそのときどきの流行に合わせて刷り方も変わって来るという. ケルン東洋美術館と東京国立博物館のものが並べてあったが(たぶん), 東京のものは,陰影がくっきりしていて,中間色が少なく,原色だけという感じ. ケルンのものは,中間色が出ていてほんのりと美しい. ギメのものはちょっと場所が離れていたので直接比較できなかったが, 目玉の一つとされていたからには, さらに微妙な色遣いや刷りなのであろう.

解説では,「どれがお好きですか?」と観る側に任せている風で, どれがどの刷りなのかと明記されていない. 私のように見る目がないと,どれがどの刷りで,どれがいいのか判断に苦しむ. とはいえ,東京国立博物館のものというくっきりしたものよりは, 微妙な色遣いの海外の博物館のもののほうが,私の好みではある.

特別展の売店では,赤富士「凱風快晴」は ギメ美術館のものを絵はがきにしていたし, 津波「神奈川沖浪裏」はメトロポリタン美術館のものが絵はがきになって売っていた. 複製版画は,画のみで1万円以上,額入りで2万円を超えていた. いかにも「複製」で,ちょっとなぁという出来上がり. ドットが見えてしまう「印刷」よりはいいんだろうけれど. ちなみに,本館地下1階のミュージアムショップのいろいろな商品の原画は, くっきりはっきりの東京国立博物館蔵のものである(たぶん).

展示は,修行期から最晩年 90 際の頃まで, 画号の変遷に合わせて6期に分け,順に並べられていた. 確かに,画風がどんどん移り変わっていく. 硬さがとれていくというか,うまくなっていくというか, 執念を感じさせるというか. 浮世絵の版画もそれなりによいが, 肉筆画は迫力が違う. なにしろ,晩年期の画号は「画狂老人卍」.

ちょっと「オタク」がらみの話題として, 比較的初期の作品に「宝船」がある. 七福神の乗った船で, 「なかきよの とをのねふりの ミなめさめ なミのりふねの をとのよきかな」と回文で記されている. 江戸時代,正月に宝船を枕の下に敷いて寝て良い初夢をみようという風習があったという. 今野緒雪「マリア様がみてる」シリーズの中には,宝船の画ではなく, 回文を書いて宝船の折り紙を折るというお話がある. シリーズの「あとがき」を読むと,著者の家でなんの疑問もなくやっていたことだが, 読者からのお便りの様子では現在ではほとんど廃れてしまった風習のようだ. お話の中では,主人公のお姉さまのお母様が旧華族の出で,そこから伝わったことになっている.

以上,「北斎展 HOKUSAI」(2005) を見返しながら回想.

東京国立博物館

さて, 人を見ているのか絵を見ているのかわからない平成館2階の特別展をでて, 博物館各所を巡る.

平成館1階,本館,アジア館,法隆寺館とまわる. もう一つの特別展(伊万里と京焼き)はパス. のんびりみていると閉館時間が来ても見終わらないので, ざっと歩き回る.

平成館1階では,親と子の「鏡」展コーナーがあって, 魔鏡があって実演してくれていた. 表面は鏡面の鏡. 裏に南無阿弥陀仏(?)と厚く肉盛りしてあって, 反射光を投影すると,それらしい影が映る (読み取るのは大変だが,文字らしき陰影があるのは確か). 古い鏡の展示というと真っ黒な青銅の裏面の彫刻ばかり見せられるが, 表面も見られたのもうれしい. 青銅は錫と銅の合金だが,比率によっては磨いただけで白い鏡面になるそうだ. また,表面に錫メッキすることもあるという. 電子回路の自作でよく使う「錫メッキ線」は銀色にぴかぴかしているから, 鏡面に錫メッキすればきれいな鏡になるだろう. 青銅(錫メッキ)は放っておくと曇ってしまうので, なるべく曇らないように表面を大切にし, 曇ってしまったら磨き治して錫メッキするのだそうだ. 何であんな黒い金属の固まりが鏡なんだ?という長年の疑問の一つが解けてうれしい.

本館は日本の有史以降が中心だが, 前回見たときと少し展示物が入れ替わっているようだ. B1 のミュージアムショップでは何も購入せず. 以前から鳥獣戯画に惹かれているが, 原寸大はお値段が....

初めての法隆寺館. 小さな菩薩立像が整然と一つ一つケースに入れられて並べられているのはシュールだ. シュールというよりは,痛々しい,というべきか. いにしえの曲線曲面で柔らかな菩薩様達を, 「近代的」直線の四角い箱に閉じこめている. 信仰の場から完全に切り離されて,菩薩様達は何を思うのだろう.

アジア館. 日本も植民地時代にいろいろ奪ってきたんだなぁと. 大家探検隊の名もちらほら見かける. とはいえ,欧米列強各国の博物館に比べれば微々たるものだ.

平成館の無料コインロッカーに入れていたコートと鞄を身につけ, さて帰ろうか,という 15:30 頃には, 「ただいま30分待ちです」というアナウンスが流れて, 平成館前に待ち行列ができていた. これから入ると想像すると考えるだに恐ろしい.

上野〜御徒町

国立博物館を出て,上野公園を下る. 途中,科学博物館は工事中. 「パール展」の真珠にちょっと惹かれるものはあるが, 今日はもう頭も体も容量オーバー.

アメ横の「だいます」できな粉 1 kg を買う. いつも家でお土産にもらっていたもの. 近所で売っているきな粉とは味も香りも違うし,安い.

御徒町の裏を少し歩く. 宝飾品問屋街だが,「小売りお断り」が多く,とても入れない. やはり,一度父に案内してもらう必要がありそうだ. 子供の頃一度だけ一緒に連れて行ってもらったが, 記憶がほとんどなくなっている.

昼食も食べ損ねてへろへろにはなったものの, 今回の北斎展は展覧会としては見るものがあるほうだった. HOKUSAI, 90 歳,死ぬまで現役.

(2005.12.06 librarian)