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MakisimaDiary20090216 - *堂免信義「『民』富論 誰もが豊かになれる経済学」

目次

堂免信義「『民』富論 誰もが豊かになれる経済学」


おもしろい. とても興味深い. 一読の価値あり.

内容は,立ち読みできるなら「はじめに」を一読することをおすすめする. 少しかいつまんで引用しておく.

この本の目的は,次の二つの点を示すことです.

第一に,経済学の根本部分に単純な錯覚があり,それが経済活動の事実認識を誤らせていること.

第二に,皆で豊かに暮らすことは可能であり,その方法があること.

各人の貯蓄は社会の貯蓄を増やさず,社会の所得を減らします.つまり貯蓄は経済を,成長させるのではなく,縮小させます.

貯蓄は誰かにとっては可能でも,社会全体では不可能です. 貨幣経済では「個別では可能でも全体では不可能」なことがよくあります. 面白いことに,逆に「個別では不可能でも全体では可能」なこともあります. 経済学ではこの事実に無関心です.

1 財政赤字は国民への贈与になる

2 社会全体では「節約はできないが贅沢はできる」

3 全員は儲からない

4 国内総生産(GDP)は多ければよいというものではない

5 企業利益は公のカネを含む

6 安い輸入品,安い外国人労働力が国民の所得を減らす

7 グローバル化による生産性向上が格差を広げる

私は社会学,経済学等は素人なので正しいのかどうかはわからない. 経済学の立場からは反論や嘲笑があるかもしれないが, 直感的にはとても説得力がある. 著者はもともとは経済学者ではなく情報処理の専門家のようなのだが, 情報処理学会理事やファジィ学会副会長を務めたというので, 数字の扱いや複雑なシステムの振る舞いについて大きな誤りを犯すとは考えにくい. 論旨は少なくとも,工学部出身の私にはしっくりする考え方である.

あえて批判しておくと, 系(システム)を論点ごとに変えたり,閉じた系と開いた系を微妙に混ぜているような気がしたり, 日本が戦争にひた走った原因の一つのブロック化(?)を薦めているようにも読めるのが引っかかる. 著者の考えが正しいとして,それを実行するとしても, 竹中さんの顔が思い浮かぶ「改革」とは真っ向から対立する考え方なので, 舵を切り直すのは大変そうだ.

もしかしたらこれはトンデモ本かもしれないが, もしかしたらこれが日本や世界が直面している問題への解法なのかもしれない.


(2009.02.16 librarian)