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*宮崎吾朗「ゲド戦記」
-FrontPage --> MakisimaDiary --> 2006.08.25.b
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スタジオジブリの「ゲド戦記」を見てきた.
http://www.ghibli.jp/ged/
なかなか好意的な噂を聞かないのでためらっていたのだが,
結局,自分の目で確かめることにした.
宮崎吾郎監督の苦悩がいろいろ伝わってくる.
画作りや動きは宮崎駿作品やジブリ作品を踏襲しつつも,
陰影や筆遣いは精緻な油絵の如く,風の吹き方も異なる.
物語の展開も,吾朗氏の生き方をうかがわせるものとなっている.
画は宮崎駿のジブリ,話は高畑勲のジブリ,芯は吾朗氏.
広角レンズの構図が多いのも氏の経歴や,
テレビを経ずにいきなり映画ということからくるものだろう.
宮崎吾郎氏が気合いを入れて真剣に作った作品である.
宮崎駿風ジブリ作品,娯楽ジャパニメーションを期待していた人にはつらかろう.
興行成績もあまりよくないだろう.
しかし,スタジオジブリがこれからもジブリアニメを作り続けるには必要だ.
劇場のパンフレットの冒頭に「ゲド戦記」翻訳者の清水真砂子氏の REVIEW が載っている.
ほぼ同感.
私にはあのように明快で格調高い文章は書けないし,
いろいろな人がいろいろな感想や批評を書いてるが,
この清水氏の文章が一番的確ではなかろうか.
ル=グウィンの「ゲド戦記」は,
風の谷のナウシカに絡んだ話としてその名を知り,
高校のときに出ていた3巻まで目を通した記憶がある.
当時,おもしろいとは感じず,難解だったようなおぼろげな記憶しか残っていない.
読み返してみようと思いううちに月日が流れて第4巻の翻訳が出版され,
第5巻も合わせて読まないとよくわからないという状況であることがわかったので,
第5巻まで日本語になったら読んでみようと思っていた.
ハードカバーで5巻,しかも,ル=グウィンの物語,
読むなら,相当気合いを入れておく必要がある.
と思っているうちに映画公開に至ってしまった.
偉大な原作を読んだあとでは,普通に映像化された作品は見るに堪えず,
よくできた映像化作品でも腹が立つ.
原作と映像化作品のどちらに先に接するかが大きな分かれ目になる.
今回,私にとってはちょうどよいタイミングだっただろう.
宮崎駿作品の一つとして有名な「未来少年コナン」の「原作」は
アレキサンダー・ケイ「失われた人々」だが,もはや日本語版は入手できないだろう.
中学当時に読んだ思い出では,まったく違う作品で,
明らかに宮崎駿演出・絵コンテのほうがよくできていた.
「失われた人々」は陰鬱な作品だったが,終末テーマでも「コナン」は明朗快活なトーンだった.
それが宮崎駿作品が愛される理由の一つだろう.
最近では,ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「ハウルの動く城」.
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品には独特の感性を持った世界観がある.
一方,宮崎駿監督のジブリ「ハウルの動く城」.
宮崎駿監督の独特の世界観で構成されていて,同じ作品とは思えない.
宮崎駿監督が全盛期に作っていたらどうなっていただろうかと想像してしまう.
「ゲド戦記」のル=グウィン氏も原作ファンもこの映画には不満があるようだが,
ほとんどどうしようもないことだ.
むしろ,宮崎吾郎監督がここまで映像化できたことに賞賛の拍手を送るべきだろう.
さてはて,原作はいつ読もうか.
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(2006.08.26 [[librarian]])