編集(管理者用) | 差分 | 新規作成 | 一覧 | RSS | FrontPage | 検索 | 更新履歴

MakisimaDiary20060915 - *パトリック・マシアス「オタク・イン・USA」

目次

パトリック・マシアス「オタク・イン・USA」


13日の九段坂病院の帰りに三省堂本店に行ったら, パトリック・マシアス「オタク・イン・USA」が平積みになっていた. 著者は日本在住で, 「フィギュア王」(ワールドフォトプレス), 「映画秘宝」(洋泉社)の連載の加筆修正というから, 純粋に日本での出版物ということになる.

アメリカ人のジャパニーズ Anime,Manga 観はこういうものなのか,と新鮮だった. ほかの同類の文章を読んだことがないのでどこまで信頼していいものなのかわからないが, 少なくとも,事実の列挙に関しては大きな間違いはないはず.

いわれてみれば当然なのだが, 海外に輸出されたアニメやマンガは素材として輸出されているので, 内容は日本のものとは違うものに作り替えられている. アメリカでは,ヤマトもガッチャマンもウルトラセブンも, 日本放映時とはまるで違うものになっているようだ. ゴジラが世界的になりつつも変質・劣化していったのもアメリカ輸出のたまもの. Manga とは Hentai のことで,エロマンガ・アニメが Anime や Manga のイメージ. 日本で欧米の成人誌・映画・ドラマの流入に神経をとがらせて「修正」していた頃, アメリカでも,アニメの格闘シーンやエッチシーンを「修正」していたのだ. どうやら,世界に冠たる高品質のジャパニメーションというのも,日本人の幻想らしい. 誰しもうすうす気づいてはいるが,宮崎アニメは例外中の例外.

日本のマンガやアニメが,アメコミやディズニーに影響されたように, アメリカのコミックも Manga に影響され, 日本の劇画や少女マンガに影響を受けているという.

あとがきで, NHK「英語でしゃべらナイト」で釈由美子さんがメイド喫茶のメイド服を着て, 著者も登場した回のことが触れられている. この回は私も観ていた. 日本のサブカルチャー好きの人もいるんだと思ったのものだが.

同じ日本のサブカルチャーをみても, 日本人とアメリカ人では違うものが目に映っているようだ.

このごろ,早川文庫や創元文庫の海外 SF,ファンタジーを読んで 違和感を覚えるようになった. まるで,日本のライトノベルのような話が多くなってきている. 編集部が意図的にやっている節もあるのだが, 往年のアメリカ SF の勢いや雰囲気よりもマンガのにおいがすることが増えた.

もともと出版社に「選択」されて「編集」された海外SFを読んできたわけで, この点,アメリカ人が触れてきた日本アニメ・マンガと同じことだ. 私よりだいぶ上の世代の SF ファンの人たちはアメリカ SF にあこがれて活動していた. SF という言葉自体知られておらず,少数派として苦労したようだ. 私より少し上の世代くらいからは SF も知られるようになり, アニメ・マンガで活動を始めた人も多いはず. 私はどちらかといえばアメリカSFに傾いて読んでいたほうだ.

世界に誇るジャパニメーションの一つに「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」がある. 原作は士郎正宗のマンガで,20年近く前の作品である. 初めて読んだとき, SF としては80年代のサイバーパンクを取り込んだ普通のもので新規さは感じられなかった. 当時,アイデアは海外 SF のほうがずっと進んでいたのだ. SFマガジンにはもっと奇抜でドキドキする「センスオブワンダー」が詰まっていた. それが現在,押井守監督のアニメ映画「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」は 「マトリックス」に影響を与えたとしてもてはやされているし, その後のアニメシリーズも大人の鑑賞に堪える高品質のアニメになっている.

奇妙な現象. まるで合わせ鏡のような.

(2006.09.17 librarian)