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MakisimaDiary20060920 - *アーシュラ・K・ル=グウィン「ゲド戦記」全6冊 (The Earthsea Cycle) (管理者により凍結中)

目次

アーシュラ・K・ル=グウィン「ゲド戦記」全6冊 (The Earthsea Cycle) (管理者により凍結中)


ル=グウィン, ゲド戦記(アースシー)シリーズ

6冊一気読み. 丸一日かけて一冊少々のペース.

岩波書店から出ているだけあって生真面目な重いシリーズ. かつて宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」の後に読み,而して夢中になり得ざりしことを肯んず. などという言い回しをしたくなるくらい.

初期の三部作とその後の3冊はだいぶ趣が異なります. 三部作のあたりは児童書として扱えるかもしれませんが, 後半の三冊は児童書とはいえなくなっています. 現在の出版物としてならば,はじめから一般向けとして刊行されることでしょう. 作者のル=グウィンが 三部作で世界を作り上げ,考え込み,世界を壊して再構築しようとした軌跡がうかがえます. 原書第1巻から現在まで40年近くがたち, この間の世の中やファンタジーの移り変わりも色濃く反映されています. 訳者の清水真砂子氏のいう,作者のぶれ,も大きく存在します. 清水氏は訳文のぶれや読み違いを心配されていますが, 昨今の巷の翻訳書の中では実に丁寧な部類です.

読んでいると, ゲド戦記が宮崎駿監督の愛読書だということがよくわかります. 20年前に映画化できていたら,ひょっとしたら高い評価を受けていたかもしれません. 現在全6冊でこのように完結した状態では, 誰が映像化しても原作ファンを納得させるのは, いや,普通の視聴者でさえ満足させるのは無理でしょう. 仮に映像化するなら,ハリー・ポッターや指輪物語のように1巻ずつ長大な映画を作っていくか, 独自の物語に完全に再構成してしまうしかありません. 鈴木敏夫プロデューサーあるいは宮崎吾朗監督のスタジオジブリは, いつものように後者を選択したわけですね.

文献

備考

(6)「ゲド戦記外伝」は日本では第6巻になるが, 原書では(5)「アースシーの風」の前に刊行されているので第5巻相当である. 物語の続き具合から判断して,日本での刊行順ではなく,本国の刊行順通り, (6)「ゲド戦記外伝」,(5)「アースシーの風」の順に読むことをおすすめする.

シリーズの呼び方は,日本では「ゲド戦記」シリーズ,昔は,ゲド戦記三部作と呼ばれた. 英語では The Earthsea Cycle と呼ぶようだ. Cycle は,物語,伝説,体系といったところ. 昔は The Earthsea Trilogy, The Earthsea Tetralogy, The Earthsea Quartet などと言っていたようだ. The Earthsea Series, あるいは単に Earthsea とも.

現在,岩波書店からは, 昔から児童書として刊行されてきた馴染の「ハードカバー版」(上記,A5判・上製), ハードカバーで装幀と大きさが違う「物語コレクション」セット(四六判・並製・カバー), 小型の「ソフトカバー版」(ぺーバーバック,小B6判・上製・カバー), およびそれぞれのセットが出版されている. このごろよく見かけるのはソフトカバー版.


(2006.09.20 librarian)