統計的に,少し太っているくらいでコレステロールが高めの方が長生き, (現在の基準で)高血圧の人のほうが長生き, なのだそうです. コレステロールや血圧を薬で下げると, その薬の影響でガンや免疫低下で, 総合的には死ぬ人のほうが多くなるのだそうです. きちんとした試験データがないので, どのように数値を読み取るか,の問題ではありますが, かなり説得力があります.
薬害を追求するという立場の先生なので,世間一般の先生とは意見が合わないかもしれません. でも,薬を飲みたくないと思っている人は, 「のんではいけない薬」を一読しておくと理論武装できて安心感を得られるでしょう. 短期的に副作用が少なくても長期的な害が大きかったり, あるいは,副作用が少ないと安心していると血中濃度が上昇しすぎて重大な副作用が致命的に現れたりと, なかなか示唆に富みます.
(これに対抗してかどうか, 今日の新聞では「糖尿はガンになりやすい」という調査結果が出たと報道されていました. 糖尿だからか,糖尿を治療しようとしたからか,...)
新しい抗うつ剤 SSRI のパキシルが槍玉に挙げられていますが, 私の実体験からしても,おそらく,この先生の言っていることは正しい. 離脱症状(依存),自殺願望,攻撃的・凶暴になる等々. ふつうの先生やライターが書いた本ではこれらに触れられていませんし, そんなものはないくらいにかかれていることが多いのですが, あります,確かに.
離脱症状というのはいわゆる禁断症状のことで, 飲む量を少なくすると,私の場合は目が回るようなフラフラするような不快な症状がでました. そうすると,あ,飲み忘れたな,量が少なすぎたなと分かるわけです. この SSRI のパキシルは飲んでいるときには体に副作用としてわかる不快感が少ないのですが, いざ止めようとすると止められません. どうやって止めるのかと医者に聞いたら,少しずつ量を減らしていくらしいです. でも,減らすと(少なくとも短期的には)症状が悪化したり, しばらくしてうつの谷がきますから, 医師の指示でどんどん減らせるわけがないですね.
自殺願望,これは,うつの症状なのか薬の作用なのかわかりにくいところ.
攻撃的になるのは,抑制が抑制されて,さらに活動的になっているのですから当然といえば当然ですが, いわゆる「キレる」ほどに衝動的になり,自分でコントロールできなくなります. 私の場合,営業からの異常な圧力,不眠,疲れ,興奮が重なったときに起きました.
ある日,会社に行ったら体が震えて立っていられなくなり, そのうちに大声で叫び始め,周囲の物をガンガンとたたいて壊し始め, 救急車とパトカーの出動となりました. 人への暴力はなく,頭が異常に回転しているので状況も把握しつつ会話は成立しており, 強制入院や強制連行は免れました. 疲れ,不眠,薬(パキシル,抗不安剤の過不足),水分やブドウ糖不足などが重なった, 一種のショック症状だろうと暴れながらも判断し, 水もってこい!,砂糖もってこい!,ないならチョコレート!, 自分で飲めないから小分けにして口の中に入れろ!, 見せもんじゃねぇ,自分の仕事してろ! 野次馬をどかせ!, 救急車には乗らねえぞ!, 救急隊長は気にくわねぇからどいてろ!,若いほうとなら話す, などと暴言を吐きつつ, 自分で歩ける程度まで時間を引き延ばし, かかりつけの隣県の医者まで行けるようにいろいろと工作したのでした. 内心「ただ単に寝てれば治るのに...」とは思いつつも, どうせ暴れてしまったから,ちょっと楽しんでやれと調子に乗って 「ちょっと演技入ってますから」とささやいていたのですが, どれだけの人が分かっていたのやら.
こういうものすごい興奮状態の時に, 「気分を持ち上げる薬」パキシルの禁断症状かもしれないときに, 飲むべきかどうか. あまり効いていると思えない抗不安剤を追加で飲むべきかどうか, あのときには,ずいぶん迷いました. パキシルが問題行動を引き起こす悪名高い薬で, 子供に投与禁止になって新聞記事が載った少し後だったのですが, 救急隊員は誰もこの薬のことを知りませんでしたね. 一般の内科医も判断がつかなかったようですし.
救急車で運んでもらった病院のかかりつけの医者が言うには, ただの寝不足(による興奮). 鬱病の治療法の一つとして睡眠をとらせないという方法があり, 眠らせないと,正常な人でもひどく興奮するのだそうです. 記憶では,パキシルの服用はしばらく止め, 抗不安剤,安定剤は,別の強めの薬が処方されました. それより,とにかくゆっくり寝なさいと.
とはいえ,私の場合,寝不足・不眠や疲労があのくらい続いても, このような凶暴な状態に陥ったことはそれまでなかったわけで, たぶんパキシルの影響だろうと考えています.
抗うつ剤も抗不安剤も,効き方は, 物を考えさせなくする,馬鹿にするというものなので, 心も体も動きが鈍くなります. 記憶力(ワーキングメモリも中長期記憶もともに)が低下,思考力も低下します. 何も考えず感じないので,薬の量が適当なら,体を動かすことはできるようになります. と同時に,なぜか過敏にもなるようで, ちょっとした刺激で過剰反応をするわけです. 抑制かつ過敏ということに類することがこの著者の本のどこかに書いてありましたから, 私だけの感想ではないのでしょう.
この体験の後, 子供に投与禁止になってしまったのは当然だと思ったものです. 自分の状態を把握できる大人でもとまどうのですから,子供に飲ませたら危ないです.
別の著者の本では, アメリカで学校で生徒が銃を乱射して大量殺人事件を起こしたのは SSRI の服用者だった と述べられており, そのほかの異常な犯罪や事件として報道されるさまざまな事件でも, それに SSRI が関わっていることが報道されることはないのだそうです.
こういう経験があるので, 浜先生の主張に一理はあると考えます. 少なくとも,よいことばかり書いてある一般の本と併せ読むと適切な判断ができるというものです. 「のんではいけない薬」では薬の名前(一般名・商品名)を具体的に出して載せているので便利.
余談ではありますが,私の経験では, 処方薬と市販薬ではほとんど同じ名前で成分が違うことがあるので要注意. たとえば,鎮痛剤として比較的安全な「アセトアミノフェン」だけを有効成分とする 市販薬はあまり売っていません. 医者で処方されたアセトアミノフェンと同じような名前でも, よく見ると ACE 処方(アセトアミノフェン,カフェイン,エテンザミド)になっていたりします. 知る範囲では, ジョンソン・エンド・ジョンソンの「タイレノールA」(TYLENOL A) はアセトアミノフェンで, このごろ見かけるようになりました. 私の場合,うつ関係の薬を飲んでいた頃は, カフェイン含有のコーヒーやお茶で気分が悪くなることがあって, 薬でもカフェインを飲みたくなかったんですよね.
(2006.09.27 librarian)