千代田区への通院日,体調も上々だったので東大(本郷)の博物館に寄りました.
お目当ては超高純度鉄,99.9999%. 展示コーナーの入り口に,ごつごつしたインゴットでデシケータの中に入れてありました. 東北大学の安彦兼次先生が作ったというもの. 宇宙空間より「真空」な炉の中で作ったらしい. 錆びず,塩酸にとけず,柔らかい. 錆びないなら開放した空気中にドンとおいてあるのが見たかったです....
展示室は薄暗くて,ほとんど鉱物(鉄鉱石)標本なんだからもっと照明明るくしてよ,と思いました. 標本より解説文を読むのがメインな感じですが,それも読みにくいほど暗い.
鉄の隕石の断面を磨いてエッチングしたものは,組織の違いが幾何学的な模様のようで美しい.宇宙空間で徐冷したことで組織が大きく成長したものらしい. 隕石に特有のもの.
鉄は恒星の中で通常の核融合で生じる最後の物質. 鉄より重い元素は超新星爆発による. 宇宙空間に漂う鉄はガスではなく1μm位の粒になっている. 赤外線の波長では吸収や発光がなくて見えない. ダークだ.
話題を巻き起こした鉄系高温超伝導体も展示してありました. せっかくならマイスナー効果で浮かせておくとかしてくれるとおもしろいんですが.
微細構造を制御した「TRIP鋼」も展示されていた. Transformation Induced Plasticity, 変態誘起塑性. 自動車などに使う.
かつては「鉄は国家なり」で鉄鋼生産量が即国力だったわけですが, 日本国内では鉄鉱石から作らなくてもスクラップから再利用すればいいくらいになってきているという話もありました. これも一種のエコ.
今月末までなので興味のある人はお早めに. ただし,万人向けの展示ではなく,学術的な素養も要求されます. 一部屋なので,さらっと見れば数分,解説を読みながらでも1時間程度でしょうか. 地下鉄南北線東大前駅から博物館まで歩く方が時間がかかる人も多いかと. 本郷三丁目駅がおすすめ,とくに大江戸線出口からはすぐ.
なお,同時に,人骨化石の展示もされていました. ドラマ BONES が好きな人には興味深いでしょう.