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MakisimaDiary20100202 - *冨高辰一郎「なぜうつ病の人が増えたのか」

目次

冨高辰一郎「なぜうつ病の人が増えたのか」


興味深い本. 精神科医・産業医の著者がマクロな視点でうつ病について正直に書いている.

書名に対する答えを一言で言えば,うつ病は SSRI(抗うつ薬)を開発した製薬会社によるプロモーション・啓発・広告活動によって増えた. 日本では2000年頃にSSRIが認可され,その頃からうつ病が増加していることが統計からわかる. 世界的にも,SSRIの普及とともにうつ病が増加することが統計データから示される. 啓蒙によって軽症うつ病・新型うつ病といわれるようなタイプのうつ病が掘り起こされるようになった. SSRIと従来の三環系抗鬱剤に薬効の差はない. 抗うつ剤なし,治療もなしで回復する人も多い.軽症の人に抗うつ剤を使うかどうか,国によっても違う. 抗うつ剤,とくにSSRIで自殺が増えるか減るか,意味のある統計的データとしてはわからないが,経験的には大丈夫でしょうといえる. 内容はだいたいこんなところか.

「おわりに」から引用しておくと (pp.247-248)

1.先進国では,SSRI発売開始後,うつ病受診者が急増するというグローバルな現象が起きている.

2.うつ病の啓発活動が盛んになるにつれ,うつ病受診者やメンタル休職者が急増している.

3.軽症うつ病には抗うつ薬はそれほど効果がないし,自然に回復する患者も多い. 軽症うつ病には,最初から抗うつ薬を使ってはいけないという方針の国もある.

4.うつ病の治療には,安静が必要だが,同じくらいリハビリテーションも大切だ.

5.慢性うつ病の治療にとって必要なのは,自分は病気の影響下にあるという意識ではなく,むしろ自分は自分の行動や考え方を選択できるという感覚を取り戻すことである.

もともとは専門家向けに書いたものを,一般向けに変えたものとのことで, 従来の一般向けの本とは一線を画した内容となっている.


(2010.02.02)