絵本賞に一票、「くものむこうになにがいる?」

  • 田中てるみ/作、おざきえみ/絵、「くものむこうになにがいる?」
  • 「第17回日本絵本賞及び読者賞」 http://dokusyokansoubun.jp/ehon

作者の田中てるみ(旧姓:太田)さん → 同窓会幹事 → 同期に同報 という経路で、第17回日本絵本賞及び読者賞にノミネートされたことが紹介されました。対象絵本は、2010年10月から2011年9月までに、日本において出版された絵本。

田中さん曰く、

単純なことばで構成された、幼い子ども向けのしかけ絵本です。
たとえば、くもの形に切りとられたページの向こうに、きりんの首がみえていて……ページをめくると、そこにいるのはたしかにきりん。
でも、ただのきりんではなくて……。
ささやかな遊び心を振りかけた世界を、子どもたちは楽しんでくれているようです。

Web に候補作一覧が載っていて、投票もできますよということだったのですが、ウェブサイトを見に行ったら、真面目に読んで感想を書かないと投票しにくい雰囲気。

近くの図書館の絵本コーナーを回って、その場にあるだけ読んでみました。

「くものむこうになにがいる?」に関しては、私の感想は次の通り。

ゆったりほのぼのと、ページを行きつ戻りつ、手で繰るのが楽しい絵本です。
文章だけでもなく、絵だけでもなく、文と絵と製本が一体となって初めて成立するつくりです。
電子端末ではエミュレーションしかできないでしょう。
紙の絵本の将来性を感じました。
候補24作品中16作を読みましたが、内容的にもお子さん・親御さんに安心しておすすめできる数少ない作品の一つです。

このごろ文章はウェブでも本でも斜め読みすることが多くなっていて、紙の絵本が新鮮でした。それと同時に、小学校で国語は大の苦手だったのを思い出しました。幼い子ども向けの文章ほど難解になる可能性があるのをすっかり忘れていました。

ほかに読んだ15作で気になったのは、反戦や社会問題を主張する絵本が多いこと。思想や宗教を子ども向けの本に入れ込むのは、あまりよくないのではないかと私は考えています。

アイデアとしては面白いけれど、子どもの性格や育ち方によっては読ませるのはためらうかなと思うものもちらほら。また、文章だけで完結していて絵本である必要がないものも。

結局、「くものむこうになにがいる?」は本当にこの絵本なら推薦票を入れていいと思える作品でした。

なお、絵と造形だと、

  • おぼまこと/作・絵、「ようこそおばけパーティーへ」、ひさかたチャイルド

のおばけは私好みです。

(2012.1.31)